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山繭(ヤママユ)
きのうの23日は関東地方で春一番が吹いた。我が北陸地方はそれより四日も早く19日に吹いていた。きのうは金沢でも風が強くむしろ19日より強かったが北風だった。立春を過ぎて吹く最初の強い南風を春一番と呼ぶ。そのきのうの強い風で先日見つけたヤマカマスが吹き飛ばされてしまったようだ。しかしヤママユガの繭は残っていた。ヤママユガは15センチにもなる大型の蛾でその繭はヤママユといい蚕のように糸が取れる。
ヤマカマス 2026年2月14日 大乗寺丘陵公園
ヤママユ 2026年2月24日 大乗寺丘陵公園
ヤママユを見つけたのは21日だった。ヤマカマスのすぐ近くでクヌギの細い枝に枯葉を着けて下がっていた。見つけた繭はふたつでそのうちのひとつに望遠レンズを付けたカメラを向け写真を撮っていると話しかけてくる男性がいた。土曜日だったがいつも歩いている人ではない。50才前後だろうか背は高くなくやや肥満気味でニット帽を被っているが薄着でハッピのようなものを羽織りスニーカーを履いていた。それが全部黒ですなわち全身黒ずくめだった。ぼくは丘陵公園で写真を撮っているとき近づいて来る男がいるといつも、話しかけてくるなよ、と祈っている。粗野な言葉遣いで無礼な態度の人間がいるからだ。でも、幸いこの人はちがった。
なにがあるんですか。
繭です。
あの白い塊のようなものですか。
ええ、そうです。
繭ですか、蚕・・・じゃないですよね。
ヤママユガの繭です。
ぼくがヤママユを見つけたのは実はこれがはじめてだった。はじめヤマカマスかと思ったがすぐにちがうと気がついた。丸味が強いのでヤママユだろうと考えた。ちなみにぼくはヤママユガの仲間の成虫はオオミズアオというきれいな水色の蛾しか見たことがない。
オオミズアオ 2023年8月29日 大乗寺丘陵公園
男性はスマホで検索していたがうまく見つけられなかったのかすぐに次の質問が来た。
いいえ、卵で冬を越して春に幼虫が生まれるんです。
へぇ、そうなんですか、では幼虫は若葉を食べるんですね。
男性は勘がいいようだ。それでもう少し話してみようと思った。
ぼくはカメラのモニターでさっき撮ったばかりのヤマカマスの画像を見せた。
これです、カマスに似ているのでヤマカマスです。
ああ、ほんとだ。
男性は自分のスマホでヤママユの写真を撮った。あれで撮れるんだろうかと思ったがきっといいカメラが付いたスマホなんだろう。そして、また質問が来た。
あれですか、あれは違うようです、カメラで見ると丸い形で繭ではないみたいなんです。
そのあと男性はイラガの話を始めた。なんでイラガなんだと思ったがどっちも蛾ということで連想したらしく釣りをするときイラガの幼虫を餌にすると言っていた。しかしイラガの幼虫に触れると刺されてひどく痛い。ぼくは釣りにもイラガにも別に関心はなかったが、そうなんですか、と返事して無視はしなかった。そうして男性は、いや、勉強になりました、どうもありがとうございました、と丁寧に言うと坂を下りて行った。いいえ、どういたしまして。
ぼくは枝にヤマカマスがないので風でちぎれて落ちたのだと思った。どこかその辺に落ちていないかと周囲の地面を探した。枯葉の薄茶色に対して緑だから見つかるかと思ったが見つからなかった。きのうの風はかなり強かったから、だからちぎれたのであり、それなら遠くへ飛んで行ったんだろう。枝ごと吹き飛ばされたことだってありえる。
一方ヤママユはふたつとも残っていたがちいさな球形の塊はなくなっていた。いや、球形に見えたがちょうど真下から見ていてあれもヤママユだったのかもしれない。昨シーズン見つけたヤマカマスの中にもヤママユの誤認があった可能性があるし、去年の12月に見つけた繭はヤマカマスではなくてヤママユだったような気がする。こちらはもうだいぶ前に枝から姿を消していた。 2026年2月24日 虎本伸一(メキラ・シンエモン)
写真:虎本伸一
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